プロ直伝 不動産売却講座~安く出して高く売る?!
不動産を売却する際、複数の業者に査定を依頼すると、それぞれから提示される査定額には差が出ることが一般的です。売主の方々は自然と最も高い査定額を提示した業者に売却を依頼したいと考えがちです。
しかし、査定額は物件が近い将来どの程度の価格で売れるかの推定値にすぎません。査定額が高いからといって、その金額で必ず売れるわけではありませんので、この点には注意が必要です。
名古屋から岐阜エリアに密着した地元の不動産会社「ひとやすみ不動産」は、この地域の不動産市場に精通しています。「売れない不動産をゼロにする」というコンセプトのもと、顧客一人ひとりのニーズに応じた不動産売買を行っています。
今回は、ひとやすみ不動産の棚瀬代表に、納得のいく価格で不動産を売買するための査定額の考え方や販売活動についてインタビューしました。
目次
納得取引に繋がる査定額の付け方
インタビュアー:売主にとって高い査定額は魅力的に映りますが、注意すべき点はありますか?
棚瀬代表:不動産会社の中には、「媒介契約を取る」ために、実際より高い金額を提示する不動産会社も多くいます。しかし大事なのは、いくらで売り出すかではなく、最終的にいくらで売れるかです。
例えば、適正価格 2,000 万円の物件を 2,500 万円の金額で売り出し、売れ残ってしまった場合、次のステップとして値下げを行うことになります。この「売れ残ってしまった期間」 は、買手側の購入心理観点上、物件自体の価値を下げることになってしまうのです。
不動産は人生で大きな買い物のため、買手側も時間をかけて色んな物件を検討しています。物件が売れ残り、値下げされていく過程をみていた買手は、人気のない物件と判断してしまうため、本来ならば売れていたはずの2,000万円では売れない状況を作ってしまいます。
結果として、適正価格よりも安い価格での売却となってしまう可能性もあります。そのため、一見査定金額が安く見えても、最終的にはお客様の利を考えて適正価格見極めて売りに出すことが大切です。
適正価格の見極め方
インタビュアー:適正価格よりも査定額が高すぎる場合、逆に売主にとって不利な取引になる可能性があることが分かりました。しかし、売主が適正価格を把握していないことも多いです。ひとやすみ不動産では、どのように適正価格を見極めているのでしょうか?
棚瀬代表:私は以前不動産鑑定事務所に勤めていた経緯があり、適正価格の算出には一般的な不動産会社が査定に用いる「取引事例比較法(※1)」のほか「収益還元法(※2)」「原価法(※3)」などの不動産鑑定にて用いる考え方も考慮の上、査定金額を算出するようにしております。
また、ひとやすみ不動産では、不動産のプロが法令チェックや物件状況の調査を行い、契約後のトラブルを未然に防ぐための努力をしています。簡易インスペクションの知識を持つ担当者は、訪問査定の際に、どの部分を調査すれば家の状態が明らかになるかを知っており、より正確な査定を行うことが可能です。(棚瀬代表もこの知識をお持ちです。)
※1 取引事例比較法
売却対象の不動産に似た不動産の取引事例を参考にして、価格を評価する方法。
実際に行われた取引事例に基づいて価格を査定するため、市場性を重視した手法とされています。
※2 収益還元法
不動産が将来生み出す収益を現在の価値に割り引いて、価格を算定する方法。
収益還元法は、特に不動産の収益性に着目した手法です。
※3 原価法
不動産の再調達原価を基にして、価格を求める方法。
評価時点で新たに建築(建物)または造成(土地)を行う際の再調達原価を算出し、それに減価修正を加えて試算価格を導き出します。
簡易インスペクションとは?
簡易インスペクションは、基本的な建物検査を指します。この検査により、建物の状態を詳細に把握し、瑕疵保険の加入可否などの判断を行うことができます。「簡易」とはあっても、これは中途半端な検査を意味するわけではありません。
多くの会社が訪問査定時に建物の状態を十分に確認しない中で、簡易インスペクションを実施する会社は、建物の状態をしっかりとチェックし、その上で査定額を提示します。
具体的には、ある会社の担当者が訪問査定で「この建物は状態が良好ですね。問題ありません。」と評価する一方で、簡易インスペクションを行う別の会社の担当者が「床の傾きは1,000分の6以下という瑕疵保険の基準を満たしています。この建物は大丈夫ですね。」と具体的なデータを基に説明する場合、後者の方がより信頼性が高いと言えます。
このように、簡易インスペクションは建物の現状を正確に評価するための重要な手段です。
顧客と信頼関係を築くために
画像出典:株式会社ひとやすみ不動産
インタビュアー:不動産売買に関して、金額だけでなく不動産用語や法令など、分からないことが多く、不安を抱える顧客も多いかと思います。不安を感じる顧客に対して、特に心がけている対応はありますか?
棚瀬代表:すべての不動産会社や営業マンがそうではありませんが、成績やノルマのために急いで結論を求める業者本位な対応を多く見てきました。大事な人生の節目である不動産選択は、焦って決断するものではありません。
お客様にはじっくり時間をかけて、「ひとやすみ」しながら検討していただきたいという想いから、ひとやすみ不動産は設立されました。弊社の営業担当は「売る」ことを強制するのではなく、お客様が「買う」決断をするために、全力でサポートし、寄り添う姿勢を大切にしています。
具体的には以下の点を意識した対応を心がけています。
・極力専門用語を避け、わかりやすい言葉で説明を行っています。
・住宅は人生での大きな買い物ですので、売却も購入も強引な営業は行いません。
・一人ひとりの異なるニーズに合わせた対応を心がけています。例えば、「早く売りたい」「高く売りたい」など、お客様のご要望に応じたアプローチを取っています。
・丁寧な対応をすることで、売買の過程でのトラブルを減少させる努力をしています。
このように、ひとやすみ不動産では、お客様一人一人の不安を解消し、安心して不動産取引が行えるようサポートしています。
販売活動について
インタビュアー:最後に販売活動について伺います。スムーズで納得の不動産売買取引を成功させるためにどのような販売活動を行っていますか?
棚瀬代表:売却を行う上では、買手側に寄り添った売り出し方を心掛けています。具体的には以下のような活動を行っています。
Web掲載の物件写真
プロによる撮影を活用し、新築物件のようなクオリティを目指しています。物件の内外装だけでなく、周辺環境の写真も撮影し、物件の魅力を全面にアピールしています。これにより、物件がより売れやすくなるよう努めています。
バーチャルホームステージング
専任媒介契約以上のサービスとして、バーチャルでのホームステージングを取り入れています。これにより、購入者が物件を実際に見ることなく、インテリアや空間の可能性を容易にイメージできるようにしています。
これらの取り組みにより、購入者が物件を実際に訪れる前から、より具体的なイメージを持ってもらうことが可能となり、効果的な販売活動を展開しています。
棚瀬代表によると、一部の不動産会社が不適切な高額査定を提示するケースがありますが、重要なのは物件が実際にどの価格で売れるかということでした。適正価格より高く設定した査定額は、売れ残りリスクを高め、結果的に物件価値を下げてしまう可能性があります。
ひとやすみ不動産では、簡易インスペクションを通じて正確な物件状態の把握と適正価格の見極めに努めています。販売活動においては、購入者の視点を重視し、高品質な写真撮影とバーチャルホームステージングを用いて物件の魅力を最大限に引き出しています。
最後に、棚瀬代表は、顧客一人一人の不安を解消し、信頼関係を築くために、わかりやすい説明と丁寧な対応を心掛けていると述べています。これらの姿勢が、顧客から高い信頼を得ている理由であり、納得のいく不動産取引を実現する上での重要な要素です。